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AI Agent Column 6

2025.2.28

AI Agent導入の進め方

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前回のコラムでは、AI Agent導入の一つの事例を紹介しました。では、これからAI Agentを導入しようと考えたとき、どこから始めるべきでしょうか?

本稿では、AI Agent導入する際に必要となる4つのステップを紹介し、どのように進めるべきかを整理します。

 

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AI Agent 導入前の4ステップ

 

AI Agentは従来のAIに加えて新たな難しさがあります。そのため、まずはAI Agentを「理解」することから始めることが重要です。その上で、適用する業務を「選定」し、運用を含めた to-beを「設計」し、そのto-beに向けたステップを「計画」します。

 

(1) 理解 (Understand): AI Agentの特性を知り、できること・できないことの感覚を養う

(2) 選定 (Prioritize): AI Agentの強みを活かせる業務を見極める

(3) 設計 (Design): AI Agentの業務への組み込み方のto-beを設計する

(4) 計画 (Plan): 設計で描いたto-beの実現に向けた具体的なステップを計画する

 

(1) 理解(Understand)

これまですでに AIの導入を経験している方の中には、「AI AgentもAIの一種だ」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、AI Agentは従来のAIより格段に便利になった部分もあり、だからこそ新たな難しさも見えてきています。まずは十分な理解が必要です。

 

AI Agentは、技術そのものが複合的で、従来のAIよりも構造がはるかに複雑です。

従来のAIは多くの場合、「教師あり学習」を用いた回帰や分類の問題として定式化し、データを集め、学習・評価し、適用する、という流れで進めることができました。しかし、AI Agentは 生成AI・タスク分解・自律実行・外部ツール連携 など、複数の技術が組み合わさるため、単体のモデルとして扱うことができません。

 

また、AI Agentのメリットの「自律性」を享受するために、多くの場合LLMの能力を活用することになります。LLMは自然言語を扱い、確率的に動作し、状況に応じて動的に判断するため、従来のシステムのように明確なルールを定めて設計することが難しくなります。事前にすべての挙動を想定できるわけではなく、「どう運用すれば意図通りに動かせるのか?」を深く理解しないまま導入を進めると、想定通りに進まず、行き詰ることになります。

 

このようにAI Agentを導入する際には、まず 「何ができるのか」「何ができないのか」「どう動くのか」 について感覚を養うことが重要です。

 

(2) 選定(Prioritize)

AI Agentは万能ではなく、得意不得意があります。適用する業務によって効果が大きく異なるため、業務との相性を見極めることが重要です。

 

従来のAIは、「十分なデータが揃っていて、明確な判断基準がある業務」なら適用しやすい傾向がありました。しかし、AI Agent は技術自体も複合的であり、タスク分解や実行まで担うため、ある業務に適用したときに、うまくいくかどうかを見極めるのがより難しいと言えます。

 

適用業務を選定する際には、次の3つの軸 で評価するのが有効です。

  • ビジネスインパクト: 導入による業務改善の効果が大きく、企業戦略とも合致するか

  • 技術的な実現可能性: 必要なデータやシステム環境が整い、実装が可能か

  • 業務適用の実現可能性: 法的・倫理的な問題なく、利用者・関係者にも受容されるか

これらの視点を押さえ、実現可能性が高く、導入の効果が見込める業務から適用することが重要です。

 

(3) 設計(Design)

AI Agentは現時点ではまだ、箱から出してそのまま業務に適用できるようなパッケージ製品にはなっていません。実業務に組み込むには、次のような課題に対処する必要があります。

 

不確実な挙動

AIには確率的 (stochastic) な性質がつきものです。従来のAIでは、人が「判断」を担うのが定石でしたが、AI Agentの場合は「判断」も自律的に行うことが期待されています。確率的機構、決定論的 (deterministic) 機構、人の介入のバランスを設計する必要があります。

 

知識の不足

LLMは膨大な公開情報から学習することで、豊富な知識を獲得しました。しかし、多くの業務は現場の暗黙知に依存しており、LLMもそのままでは上手く対処することができません。これは短期的に解決できるものではなく、長期的な知識獲得の設計が不可欠です。

 

要件・環境の変化

業務要件やデータ、外部環境は常に変化し続けます。導入時に最適な設計をするだけでは、そのパフォーマンスを持続することはできません。業務で継続的に利用するには、変化に適応できる仕組みをあらかじめ組み込む必要があります。

 

これらの課題は、システム設計だけで解決できるものではありません。システムと運用の両面を統合的に設計するアプローチが求められます。

 

(4) 計画 (Plan)

AI Agentの適用業務を決めto-beのシステム・運用の形が描けたら、そのto-beの実現に向けたステップを計画する必要があります。従来のITやAIの導入と共通の部分もありますが、AI Agentならではの注意点もあります。

 

不完全であることを前提に計画する

AI Agentの動作には確率的な要素が含まれるため、導入前にすべてのケースを想定することは不可能です。最初から「完璧な状態」を目指すのではなく、スモールスタートし、フィードバックを活用しながら適応させていくことが重要です。

 

リスクの取り方を計画する

不完全なAI Agentにすべてを任せるのは難しいため、最初は範囲を限定し、段階的に広げるのが現実的です。 ただし、一度「人が判断」する仮運用を始めると、後から変えにくくなります。リスクとリターンを総合的に評価し、本運用への移行基準を事前に定めることが重要です。

 

問題発生時の対応を計画する

AI Agentは確率的で複合的な技術のため、問題発生時の原因特定や対処が非常に困難です。未知の問題が起こる前提で、柔軟に対応できる環境を整える必要があります。また、問題発生はAI Agentにとって貴重な学習の機会でもあります。問題の解決だけでなく、継続的改善につなげられることが重要です。

 

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まずは全体を4ステップに整理してみました。次回は、(1) の「理解」についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

お楽しみに!

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