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AI Agent Column 1

2024.12.26

AI Agentとは?

近年のAIの進化は目覚ましく、私たちは既に対話型AIや生成AIを日常的に活用しています。その中でもここ1・2年、特に注目されているのが "AI Agent" という概念です。AI Agentとは一体何でしょうか? これまでのAIと何が違うのでしょうか? AI Agentコラム第1回の本稿では、まずAI Agentとは何を指すのかを整理したいと思います。

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AI Agent とは?

 

例えば、あなたが旅行の計画をしているとします。目的地や日程だけをAIに伝えると、最適なフライトを検索し、予約を完了してくれる。さらには、ホテルの予約やレストランの手配まで自律的に進めてくれる―これが、今注目されているAI Agentの一例です。

 

"AI Agent" という言葉自体は以前からありましたが、現在のような「大規模言語モデル(LLM)を活用し、自律的にタスクを遂行するシステム」の意味で使われ始めたのは、2023年4月ごろからです。具体的には、LangChain, Auto-GPT, BabyAGIなどのシステムが次々と登場し、それぞれがツール連携やタスク処理の新しい可能性を示しました。従来の対話型AIとは異なり、目標達成のために自ら情報を集めタスクを分解し実行する『行動するAI』という新しい方向性を打ち出したと言えます。これ以後このコンセプトが "AI Agent" として広まり、ビジネスや研究の分野で大きな注目を集めています。

 

このように "AI Agent" は幅のある概念ですが、このコラムでは次のように定義します。

「自律性、反応性、積極性、社会的能力を持ち、環境と相互作用して目標を達成するシステム」

 

これを図にすると以下のようになります。自律性、反応性、積極性、社会的能力という4つの特性が連携して、AI Agentが目標達成する仕組みを表しています。

AI_Agent_chart.png

ここで特に注目すべきは、「環境に作用して目標を達成する」という点です。従来の対話型AI(ChatGPTなど)は、ユーザーの問いに答える「受動的」な存在でした。しかし、AI Agentは目標に向けて自ら情報を探し、計画を立て、ツールや他者との連携を通じてタスクを遂行する「能動的」な存在へと発展しています。

 

従来の自動化との違いは?

 

「行動する」システム自体は以前からありました。

例えば、RPA(Robotic Process Automation)は2010年代前半ごろから広く認識され実用化している技術です。RPAも環境を観測し、自律的に環境に対して行動を起こすことができます。ただし、その判断はルールに従って行われ、そのルールは事前にプログラムやフロー図など形式的な手法で記述しなければなりません。

これに対して “AI Agent” は、ユーザーが自然言語で目的を指示するだけで、あとは判断することができます。この差は非常に大きいものです。

 

冒頭に挙げた旅行の手配の例で考えてみましょう。

 

RPAを使った場合、フライト予約はあらかじめ設定された手順に従って行われます。航空会社のウェブサイトにアクセスし、日付や目的地を入力して検索、条件に合うフライトを選んで予約する、といったプロセスです。しかし、この手順は固定的で、予期せぬ事態には対応できません。例えば、フライトが満席の場合、RPAは次の手順に進めず、人間が条件を再設定する必要があります。

 

一方、AI Agentは異なります。フライトが満席の場合、自ら次の選択肢を探し、条件に合う別のフライトを提案します。それだけでなく、フライト変更が宿泊やレンタカー手配に影響する場合でも、関連タスクを再調整し、計画全体を柔軟に再構築できます。固定的な手順に縛られず、目標達成に向けて動けるのがAI Agentの特長です。

 

AI Agentの位置づけ

 

このように、AI AgentはChatGPTの自然言語能力とRPAの自動実行の技術が融合したものと捉えることができます。対話型と自動実行型、自然言語とルールベースという2軸で整理すると以下のようになります。

このように、AI Agentは「自然言語で指示し、タスクを自動実行する」という点で、他の技術とは一線を画しています。

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今回は、本AI Agentコラムの第1回として「AI Agentとは?」を整理してみました。次回の第2回では、AI Agentがなぜいま、企業や研究者たちの注目を集めているのか、その背景を掘り下げていきます。ぜひご期待ください。

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