AI Agent Column 2
2024.12.26
なぜいま、注目されるのか?
AI Agentコラムの第1回ではAI Agentというコンセプトそのものをご紹介しました。第2回の本稿では、そのAI Agentがなぜいま、これほど注目を集めているのか、その要因を掘り下げてみたいと思います。
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3つの要因
前回整理した通り、AI Agentは「自然言語で指示し、タスクを自動実行する」という点で、従来の技術とは一線を画する存在です。では、このAI Agentがなぜいま、これほど注目を集めているのでしょうか? その背景には、次の3つの要因が挙げられます。
1. 技術のブレークスルー
AI Agentが注目を高めた最大の要因は、大規模言語モデル (LLM) の飛躍的な進化です。
特に2022年11月にリリースされたGPT-3.5は、対話型アプリのChatGPTと共に普及し、LLMの可能性を人々に知らしめました。さらに2023年3月のGPT-4の登場により、LLMは単にテキストや情報を生成するだけでなく、タスクを理解し、自律的に遂行する「思考力」に近いものを獲得していることが明らかになりました。
例えば、GPT-4は旅行の計画を立てる際に、フライト、宿、食事の手配が必要であることなどを理解して、それぞれのタスクに分解することができます。
従来のAIは事前にルールを与えられた範囲でしか動けませんでしたが、LLMは自然言語での指示を受け、状況に応じた判断を柔軟に行えるようになったのです。これが、AIが「行動する」存在へと進化するブレークスルーとなりました。
2. 環境の整備
次に、このブレークスルーをビジネス活用へとつなげる研究開発の「環境」が整備されたことが挙げられます。
OpenAIなどによるLLM APIの公開や、AWS、Azure、GCPといったクラウドインフラの普及により、個人や企業がAI技術を手軽に利用し、試行錯誤を重ねることが可能になりました。また、LangChainやAuto-GPTといったフレームワークの登場により、LLMと他のツールやシステムを組み合わせたAI Agentのプロトタイプを簡単に構築できるようになってきています。これらの環境・エコシステムの普及が、研究者や開発者の創意工夫を後押しし、AI Agentの実用化を加速させています。
3. ビジネスの期待の高まり
技術と環境が整ったことで、ビジネスの現場でもAI Agentへの期待が急速に高まりました。多くの企業が導入に向けた具体的な検討や計画に着手し、またMicrosoftやSalesforceといった大手テクノロジーベンダーも相次いでAI Agent関連の新機能やサービスを発表しています。これらの動きにより、AI Agentを「未来の技術」から「現実のビジネスチャンス」へと変わり、さらに多くの注目を集めるきっかけとなりました。
これらの要因が重なり、AI Agentは今、生成AIを超える「次なる革新」として注目を集めています。かつてインターネットやスマートフォンが世界を変えたように、AI Agentも私たちの働き方や日常に劇的な変化をもたらすものとなるでしょう。
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次回の第3回では、実際のところAI Agentで一体何ができるのかを整理してみたいと思います。ぜひご期待ください。